2010年1月24日 4:03:04JST出現の火球(-4.6等)
報告:上田 昌良
SonotaCo Networkに報告のあった同時流星から、火球を選び出してリストに司馬康生氏がした。そのリスト中から、消滅点が30km前後の低空まで達した火球の1つがこの火球である。
1.撮影の状況
記号 撮影者 撮影地 撮影レンズ 発光点 消滅点 フレーム数 最大測定光度 備考
M10029 室石 英明 石川県 8mm × 76      -3.47 雲多し、発光点は雲の中
M10030 三本松高校 香川県 8mm 133      -3.6 1/30s、2個に分裂か?
M10031 ada 千葉県 6mm 136      -1.42 経路の途中で雲に隠れる
M10032 Ito 東京都 12mm 150      -2.40 1/30s、快晴
M10033 Masuzawa 長野県 6mm × 112 -2.79 途中から写る、4:03:08

この火球の画像は次のところを参照のこと。
http://sonotaco.jp/forum/viewtopic.php?t=2251

上記の表のとおり、5カ所での同時観測があった。撮影は、ワテックの超高感度のCCTVカメラに観測用ソフトである
UFOCaptureV2を使ったものである。

2.対地軌道




日本海側、100.6km上空で発光し、31.3kmの高さで消滅した。消滅点での速度は12.9km/sであり、隕石落下の予報計算が
必要な速度と高さである。この火球の実経路長は98kmであった。

3.軌道等
  
No.
年月日 (YYYYMMDD) 20100123
時刻UT (hhmmss) 190304
視輻射点 αo     127.0 ±0.16°
δo +41.1 ±0.20°
修正輻射点 αG     123.0
δG +39.9
観測速度 V∞(Km/s)     24.6 ±10.3km/s
消滅点での速度 V (km/s)     12.9 ± 3.6km/s
地心速度 VG(Km/s)     22.2
日心速度 VH(Km/s)     39.5
交差角 Q(deg)     49.4
絶対光度 (Mag).     -4.6 λ:136.676° φ:+36.309° h:52.8km
発光点 Hb(Km)    100.6 λ:136.201° φ:+36.484°
* *
消滅点 He(Km)     31.3 λ:136.890° φ:+36.227°
*
a :軌道長半径 (AU)    3.65
e :離心率    0.813
q :近日点距離 (AU)    0.684
Ω :昇交点黄経 (deg)   303.53
i :軌道傾斜角 (deg)    12.64
ω :近日点引数 (deg)   251.38
P :周期(年) (yr)    6.97
流星群名     Spo
継続時間 (sec)     5.0
太陽黄経   303.532
突入角 (deg) 45
測光質量 g 72
(J2000.0)

この火球は散在流星であった。

4.速度の減速と光度曲線


上のグラフは、三本松高校とIto氏の流星データの組み合わせで計算したものである。AnalyzerV2の自動測定位置での各フレームごとの速度(緑色)は、火球が明るくなったときに特にばらつきが大きいことがわかる。一方、AnalyzerV2を使った手動測定からの速度(青色)もばらついているが、火球経路の明るくなった地点で特にばらつくことはなかった。明るさは発光点から徐々に明るくなり、徐々に暗くなっていったことが光度曲線からわかる。



Ito氏の撮影火球からの速度も自動測定位置からの速度(緑色)は、火球の明るくなったときがばらつきが大きくなっている。手動測定からの速度(青色)は明るくなったときでもばらつきが特におおきくなるということはなかった。火球で明るくなった部分の測定には、手動測定が有効である。
速度の減速の様子がわかり、発光点で24.6km/sであったのが消滅点では12.9km/sまで減速していたことがわかった。


5カ所、全部の速度を表示したもの。

5.観測地から同時流星の最輝度光度地までの距離
記号 撮影者 撮影地 流星までの距離(km)
M10029 室石 英明 石川県 132
M10030 三本松高校 香川県 317
M10031 ada 千葉県 323
M10032 Ito 東京都 281
M10033 Masuzawa 長野県 113

観測地から火球までの距離が最も近かったのは、Masuzawa氏(長野県)であった。逆に最も遠かったのがada氏(千葉県)であった。

6.火球の動画を手動で測定
 AnalyzerV2ソフトは、火球で明るく輝く部分をうまく測定できなかったので、三本松高校とIto氏にこの火球の動画・静止画を提供していただいた。5カ所、全部から提供していただいた場合には1フレームずつを測定する作業量が膨大になるので、2カ所だけに限らせていただいた。


上のグラフ中の点はM10030で、火球の天球上の測定位置の(α、δ)である。
青:AnalyzerV2による自動測定位置(M***A.XMLファイルにある位置)
赤:手動測定の位置、AnalyzerV2とM***A.XML, 動画、静止画を使い、動画をコマ送りし、1フレームごとにマウスでカーソルを火球
  にあわせて位置を読み取った。チェック用に恒星の位置を測り、星表の位置と比較をした。位置は、2〜5′の差で合っていた。
  しかし、グラフにあるように手動での流星位置はあきらかにズレていた。
茶:手動測定(2回目)、PROF(プロファイル)を作成して、(M**A.XML削除)自動位置測定をした後に、再度、手動測定を行った。
  今度は、流星位置がズレなかった。恒星も測ったが3′の誤差であっていた。
黄緑:M**.csvファイルの発光点・消滅点の位置

注)もともと、AnalyzerV2ソフトは、このような手動測定を想定して作られていないので、使用に当たっては自己責任で十分注意し
  て使用のこと。



M10032の自動測定位置(α、δ)青、手動測定・赤、この動画はPROFを作らなくても、うまく手動で測定できた。ただし、対角線上に
ズレていた場合は、チェックができない。
各フレームの流星の明るさは、自動測定の光度を使った。また、自動測定は1フレーム1/60秒だが、手動測定の場合には1/30秒と
なる。


7.謝辞
今回の同時火球のM**A.XMLファイルを撮影者の方、全員から提供いただきました。さらに、三本松高校の三好氏とIto氏には、動画・静止画を提供していただきました。最後になりましたが、お礼もうしあげます。




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