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長経路流星(2016年2月11日1:41:07 JST出現)



長経路流星(2016年2月11日1:41:07 JST出現)
報告:上田昌良

◎概要

 継続時間が10.8秒で、実経路長が223.2 kmもある長経路流星が広島県尾道市上空から高知県沖の海上上空に出現しました。この流星は7°という小さい突入角で地球大気圏に突入して大気密度の小さい高さを通過したため、速度の減速は見られませんでした。この流星の初速は20.9 km/s±2.5 km/sという遅い速度でした。また、この流星の修正輻射点はαG=323.9°δG=+53.5°でした。

 この付近に輻射点があった流星は2016年2月3日23:56:09 JST出現の低速流星がありました。この付近に輻射点がある低速の流星の出現がどの程度あるのかに注視してゆきたい。

◎同時観測

 この流星は横道順一氏(岡山県、M16017)と上田昌良(大阪府、M16016、この動画)が動画で撮影し、岡山理科大学TENGENモニター(岡山県、伊代野氏、M16018)で静止画が得られ、3カ所での同時観測となりました。

 軌道計算をするための流星位置について、M16017の流星の位置測定はUFOAnalyzerV2で自動測測定したものを使いました。そして、M16016の流星は前述のソフトでの自動測定では流星の写っていた530フレームのうちの約半分しか位置測定ができていませんでした。これは超広角レンズによる撮影のため、流星の限界等級が1等であり、それで流星の光度変化で限界等級に近い部分が測定できなかったと思われる。これでは各フレームごとの観測速度をうまく出せないので、同ソフトにて手動で位置測定を行った。

 M16018は静止画ですから、比較星と流星のXY座標をPhotoshopで測り、mexy4.basで位置を計算しました。魚眼レンズで撮影像が歪曲しており測定位置の残差は恒星で0.9°もありました。しかし、全天魚眼レンズにもかかわらずその最微星は4.7等程度で流星の近くに比較星が選べ有利な面もありました。





◎速度の減速がない
 この流星の軌道計算をorbit3.basで行った。その結果、初速は20.9 km/s±2.5 km/sと遅かった。また、継続時間は10.8秒と長く地球大気による指数関数的な減速を期待できるものでした。しかし、終速で20.6 km/s±3.6 km/sと全く減速がみられませんでした。これは突入角が7°と小さく、そのため写り始めの発光点の高さが102.0 kmで、写り終わりの消滅点の高さが74.8 kmと高層の大気密度の薄い所を飛行したため、速度の減速がみられなかったものです。




詳しい数値は下記の表をご覧下さい。
最後に、今回の同時流星のデータを横道氏より提供していただき、岡山理科大学TENGENモニター・伊代野氏の画像を使わせていただきましたことお礼申し上げます。
























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